「……は? お前の?」

男は珍しく驚いたように、目を見開く。

「うん。でも、もう無理かな……、時間的に

もう日付変わりそうだし」

わたしは、スマホの画面を見つめながら言った。

【PM23:35】と表示された時刻。

ーーすると。

彼はバイクに跨ったままヘルメットをかぶる。

そして、後部座席に指さした。

「乗れ」

「……へ?」

「乗れと言っている」

「なんで……、っていうか、どこに行くの?」

「翼の誕生日なんだろ」

いきなり“翼”と呼び捨てにされて、わたしは心臓が跳ねた。

「一年に一度の特別な日くらい大切にしろ」

そして、彼ーー、桔梗原は、なにかをわたしに投げてよこす。

「え……、これ……!」

それは、わたしの制服の上着だった。

「若いねーちゃんが翼に“ありがとう”って伝えてくれって

言ってたぞ」

「え……?」

「男どもは、俺が少し懲らしめたからしばらくは大人しく

してるだろう」