世の中はうまくいかないことばかり。

願ったって、叶わないし。

望んだって、手にはいらない。

だたらわたしは、最初から期待なんてしない。

江藤 翼《えとう つばさ》、高1。

腰まで伸びた黒髪ロング。

化粧はあまりしない、が。

唯一、お気に入りの、淡いピンクのリップをつけている。

11月20日。

今日はわたしの16歳の誕生日。

……なんだけれど。

「こいつは上玉だな~」

「女子高生でしかも美人なんてたまんね~」

わたしは今、複数の男に絡まれている。

でも、不思議と怖くなかった。

だって、義理のお母さんの方がよっぽど怖いから。

わたしは、おもむろに口を開く。

「4万って約束でしょ?」

男たちは顔を見合わせる。

「あー、ハイハイ。4万ね」

「でも、それはちゃーんと俺たちを楽しませてから

じゃないと渡せないなぁ、へへへ……」

薄暗い路地裏で、男たちの表情はよく読み取れない。

けど、わたしを舐めわす視線。

それは気持ち悪いほどに感じた。