「っ……。」

 いつの間にか繋がれていた手に、軽いキスを落とす匡君。

 突然の事にビクッと驚いてしまい、きゅっと唇を閉じる。

 だけど、それに気付いた匡君はそのまま顔を近付けてきて。

「唇にそんな力込めちゃ、疲れるでしょ?」

 そう言って、触れるだけのキスをした。

「……匡君が、意地悪するから。」

「意地悪? 教育実習の事、言わなかったから?」

「うん。私には言ってくれても……って思っちゃったんだもん。」

「ごめんねゆま、サプライズみたいな感じで驚かせたかったんだよね。」

 ポンポン、とちょっぴり雑に頭を撫でられる。

 でもそれが心地よくって、頭から離れてしまった手に名残惜しさを感じた。

「ほんとにごめんね。そんな不安にさせようと思ってしたわけじゃないから、いつもみたいに笑って?」

「……なんだか匡君に騙されたみたいだから、笑わない。」

「それは嫌だなぁ。俺、ゆまの笑ってる顔見たいのに。」

「絶対笑わない。」

 これが仕返しだ、匡君。

 いつもならそうおねだりされたら頬が緩んじゃうけど、今日はそうはいかないからね。