「別にそういうつもりで言ったんじゃないよ。キスする前の覚悟した顔もした後に照れるウブなところも全部可愛い」


ぼっとさっきよりも顔が赤くなっていく。


「ふふっ、ほんと可愛い。ねぇ、羽結ちゃん。俺からもキスしていい?」


声に出さず、小さく頷いた。


「ありがとう」


千景さんの顔が近くなり、反射的に目を閉じたところで……


「千景様、旦那様がお呼びです」


お呼び出しがかかった。


「分かった、すぐ行くよ」


千景さんが返事をしたことで、扉にいた気配が遠ざかった。


「せっかくいいところだったのに。まぁ、仕方ないけど。羽結ちゃん、行こう?」


「あ、はい」

 
今から私はメイド……


千景様の専属メイド……


自分に言い聞かせた。


私は千景さんみたいに上手く切り替えられないから。