「千景様。そこに白野はいますか?」


「うん、いるけど。白野さんに何か用?」


メイド長の須川さんの声だった。


「頼みたいことがあるのですが、少しお借りしても?」


「あぁ、もちろんいいよ。白野さん、行ってきなよ」


「は、はい。承知しました」


部屋から出ようとすると、耳元で「仕事、頑張ってね」と妙に甘い声で囁かれた。


この頬の熱に気づかれませんように、そう願いながら部屋を出た。





私は今、本を運んでいた。


うーん、重い……


この前須川さんに頼まれたのは掃除だったけど、今回は書庫に本を運ぶことと書庫の整理。


「白野さん、それって書庫に運ぶの?」


「千景様。はい、そうです」


運んでいる途中で千景様に話しかけられた。