「ん……?凛ちゃん…?」


頬をそっと触ると、竜司くんの体温が温かかった。


「痛い?」

「別に。」


竜司くんは、私の手を退けようとはしなかった。


「ごめんなさい、私、自分のことで頭がいっぱいになっていて、竜司くんの怪我のこと全く気づいていなかった。大丈夫?」


竜司くんが驚いたように目を大きくした。


「え?もしかして心配してくれてる?大丈夫大丈夫。昨日ちょっと激しくやり合っちゃってさ。凛ちゃんの腹パンに比べたら大したことないしな。」


鳩尾を指差して、ははは、と笑う竜司くん。

私は、罪悪感に俯いてしまった。

そんな私を見て、竜司くんは考え込むような顔をした。


「凛ちゃんが責任を感じるようなことは何にもないんだけどなぁ…。」


うぅぅ…ごめんなさい…

ネガティブなのも、私の悪いところです…。

突然、竜司くんが私の肩に手を置いた。


「じゃあさ、こんなこと言うのも変かもしれないけどさ。明日、双竜会に来てみない?店は臨時休業にするから。」


顔を上げると、竜司くんが微笑んでいた。

双竜会に…行く…?

どういうことだ…

理解が追いつかず、固まる。


「な…なんで…?」

「いや、一回双竜会に来てみたら分かるって。人の怪我なんか、凛ちゃんが心配することなんてないよ。」


優しいが、強い言葉だった。