「あー…そういうこと…。大変だなぁ、凛ちゃん。」


全て聞き終えて、竜司くんはただ一言、そう言った。


「どうしよう……」


頭を抱える私。

腕を組む竜司くん。

暫くして、竜司くんは顔を上げた。


「瑠衣には俺から言っとくよ。」

「ほえっ」


彼はニッと笑う。


「総長命令だ。」


その時の竜司くんは、思わず見惚れてしまうほど、無敵の総長の顔をしていた。


「えぇぇ!?総長命令?え、私のためにそんな安易に使っていいやつなの…?」

「だって凛ちゃんが困っているじゃねぇか…。」

「そ、それはそうだけどさ…。なんか悪いなって…」

「凛ちゃんが言い出したんだろ?」


竜司くんが笑う。

確かに、私から言い出したし、私がわがままを言っているだけだ。

あまり竜司くんを困らせるべきじゃない。

私は黙って竜司くんを見た。


…そういえば、さっきまで余裕が無くて全然気づかなかったけど…。

竜司くんの姿が今日は、驚くほど痛々しい。

顔や首のいたるところに傷やあざがあり、痛そうだ。


私…自分のことばっかりで、竜司くんの何も見ていなかったんだ。

自分を責めた。

こんな身勝手な私だけど、竜司くんは相談に乗ってくれた。

恥ずかしさと申し訳なさで胸がいっぱいになる。

私は、竜司くんの頬へと手を伸ばす。

頬にある内出血が、痛そうだった。