「あ、竜司くん。今瑠衣といたんだけどね。私たち、良い話し相手になれそう。」


開口一番、そう言った私。

電話の向こうが沈黙した。


「………で?」


やっと返ってきた言葉がまさかのそれ。


「え、反応うっす!!私がやっと瑠衣と話せるようになったんだよ!?」

「え?いやそれはおめでとう?だけどさ…なんで俺にわざわざ報告…?」

「……あれ、なんでだろ…。なんとなく?ちょっと保護者感覚で報告しちゃった。」


電話の向こうで竜司くんが吹き出したのを感じた。


「どういうことなのホント。凛ちゃん、変なところあるよね。」

「そ、そうかな…?」

「何?今瑠衣と二人きりでいたから、俺に妬いてほしかったとか?」

「まさかっ!!!」


妬く…なんて。急にパワーワードが出てきて動揺して笑ってしまう。


「なんか竜司くんの声聞きたかっただけ。さっきから瑠衣ばっかりで疲れた。」

「なに恋人みたいなこと言ってんの?大丈夫?」


あはは、と朗らかすぎる笑い声が電話の向こうから聞こえてきた。


「もう!そろそろ切るよ。」

「えぇ??ほんと何の時間だったのこれ。」


困惑しながらも笑ってくれる竜司くん。

やっぱり話しいやすいなぁ。


「まぁ、俺も凛ちゃんの声聞けて元気出たよ。ありがとな。」

「え…?い、いや、お礼言われる筋合いなんてないから!突然かけちゃってごめん!」


竜司くんの綺麗な声が、耳元で聞こえて、いきなり感謝されて、テンパってしまう。

その勢いで通話を切るボタンをタップしてしまった。


「あっ…切っちゃった。…ま、いっか。」


私は暗くなりだした空の下、あさがお園へと走った。