そんな父のもとで育った俺だが、どういうわけだか強く洗脳されてしまうことがなかった。

幼心にも分かっていたのだろうか。御神楽会のおかしさに。

俺は、最近、双竜会を作った。

メンバーは大体高校生くらいのガキだ。

瑠衣や慎吾をはじめとした「訳アリ」を集めて幹部を作り、その幹部を中心にいつのまにかたくさんのメンバーが集まっていた。

即席にしちゃよくできた組織になっていた。

慎吾が中心になって双竜会のシステムを整えてくれたのだ。

いつか、いつか御神楽会に対抗できる存在に。
御神楽会をぶっ壊せるように。

そう願って、俺は今、着々と勢力を広げている。

当然ながら、大人のヤクザともやり合わなくてはいけない。

マジのヤクザは、そこら辺の学生の不良と違い、それ自体が仕事だから、本当に怖い。

裏社会で戦うのは、そう簡単なことじゃない、と初めて知った。


「ねえ、竜司くん。手、止まってるよ。」


一気に現実に引き戻された。

凛を見ると、心配そうな顔で俺のことを見ていた。


「あーごめんごめん、大丈夫。」


俺は即席の笑顔を作って誤魔化した。


「大丈夫じゃないね、それ、偽物の笑顔だ。」


こいつ…俺の心配をしているのか…?

………変な子だ。


「心配すんなって。ちょっと双竜会のことで、ね。」


そう言うと、凛ちゃんは深入りするのをやめて、俺の手元で泡立つ生クリームを身始めた。