「…?好きに呼んでくれて構わないけど…。」


そう答えると、彼は微笑んだ。


「OK。凛ちゃん!」


その言葉に、背中がむず痒くなる。

歳の近い男の子に名前で呼ばれるのは初めてかもしれない。

凛ちゃん、凛ちゃん、と私の名前を確かめるように呟く彼が不思議だった。

私の名前がそんなに珍しいのだろうか。

しかも無駄に顔の良い彼に言われるとどうも調子が狂う。

分からなくなった私がふと時計を見るとすでに開店時間を回っている。


「やば!竜司くんさっさと厨房に戻って。お客さん来る時間だよ。」


まだ隣に居座りたがる竜司くんを厨房に押し込み、私はカウンターに立った。

その瞬間だった。

チリンチリン

すでに何度も聞いた音が店に響く。


「ここの店!一度来てみたかったんだけど勇気がなくてさぁ。いい店でしょ?」

「綺麗だね〜」


これまた聞き覚えのある声が響いた。

店に入ってきた二人連れの女子高校生は、店員の私を見て、絶句した。

私も、彼女らを見て、目を見開いた。


「凛ちゃん!?」


蓮ちゃんとゆっこちゃんだった。

まさか初のお客さんが二人だったなんて…。

まさかのまさかすぎて頭が付いていかない。


「れ、蓮ちゃん、ゆっこちゃん!?」


目をぱちぱちとさせて、お互い顔を見合わせた。