「おはようございます!」
あれから数日が経った。
今日は土曜日。
朝早くから竜司くんの店に行った。
「おはよー。早いね。」
起きたばかりであろう竜司くんが眠そうな目をこすりながら厨房に立った。
「今日の売り物はもうできてる。今からは明日の分を作るからお前は店の方をやってくれ。」
大きな冷蔵庫を差しながら竜司くんはそう言った。
「はーい。」
軽く返事をして、エプロンを身につける。
店のカウンターへ行き、昨日作ったものを取り出す。
『店員は精神面での疾患があり、上手く話すことができません。精一杯対応してまいりますのでご了承ください。』
動物のイラストと共に私の特徴を簡単に書いた紙のスタンドを、レジに立てた。
これは逃げ道だ。
店に来た客に、いち早く私の特徴を知ってもらう。
そうすれば私の接客のハードルも下がるわけだ。
そうこうしているうちに開店時間が迫っていた。
店の外に看板を出し、ケーキをショーケースに並べる。
準備完了だ。
私はスケッチブックを持ち、客を待てばいい。
厨房からは、シャカシャカと聴き心地のいい音が聞こえる。
「なぁ〜、お前さぁ」
その厨房から、ボウルを持った竜司くんが現れた。
「何?」
「あのさ、凛ちゃんって呼んでいい?」
面食らう。
突然何か言い出すと思ったら、何を言っているのだろう。