午後は、文化祭の準備だった。

白虎高校では、9月の第三土曜日・日曜日に文化祭が行われる。

準備は夏休み前から始まっていたが、9月に入り、本格的に学校が文化祭の色に染まっていく。

私は一応クラス劇のチームに属しているけど、裏方のスポットライト役だし、暇を持て余していた。

希望者はそれぞれ露店を出したり色々な企画を作ったり部活で出し物をしたりするそうだが、帰宅部コミュ障の私が参加できるわけがなく。

ゆっこは相撲体験会の準備で相撲部屋に、蓮はやはり百人一首体験会の準備で和室。

当てにはならないけど、瑠衣もクラス劇で主役を練習している。

顔だけはすこぶる良いから満場一致で主役になってしまったのだ。

本人は愚痴をこぼしていたけど割と楽しそうにやっている。


「………暇。」


暇だ、恐ろしいほど暇だ。

私は教室の隅の椅子に座っている。

手には一応英語の単語帳を持っているが、すでに飽きてしまい、ほぼ飾りと化していた。

んー、眠い……。

猛烈な睡魔に襲われ、首がカクンと傾いてしまう。

いけない、流石に寝たらマズイでしょ…。

私は目を覚ますためにそっと教室を出た。

賑やかな教室から離れて、屋上へ続く階段を登る。

扉へ手をかけると、ギ……と小さく音を立てて扉が開いた。

そして、ブワっと風が吹き抜ける。

暑いけど、涼しい。

後手に扉を閉めて、直射日光の当たらない場所に移動する。

そして、壁の角を曲がった瞬間だった。