「いいよ〜私も海入りたいし〜」


ワンピース型の水着を着ているゆっこが微笑んだ。

と、思ったらすでに慎吾は波打ち際にいた。

それに気づいたゆっこは苦笑する。


「柳田、ごめんよ、あいつはしゃぎすぎてこのままハワイまで泳いでいっちまうかもしれないから監視しといてくれ。一応あれでも幹部なんだ、ハワイアンになっちまったら困るんだよ。」


いやそんなことあるかい!

…って思ったが、あまりにも竜司くんが真面目な顔で言うので、ツッコめなかった。


「了解〜、そっちも楽しんでね〜」


ああ、対応がどこまでも大人…。

多分、竜司くんは面倒くさい役をゆっこに押し付けたんだよね。

それを察しているのかいないのか、ゆっこは慎吾を追って海の中に入って行った。

パラソルの下に残ったのは私と竜司くんのみ。

どちらもラッシュガードを羽織っていて、キャップを深く被っている。

流れでレジャーシートの上に座り、海ではしゃぐ4人を見ていた。


「そいえばあそこではしゃいでいる4人、まだ16歳くらいだもんね…よく考えたら子供っぽくて当たり前だね。」

「同い年が何言ってんだよ。」


サラッと自然に会話が始まるのが、竜司くんと話していて良いところだ。


「あ、俺さ、留年回避したわ。」

「え!ホント!」

「あぁ。おかげさまでな。」

「よかったぁ。」


必死に竜司くんに勉強を教えた1週間を思い出す。

スポンジ並みに吸収力のある竜司くんに焦燥感を感じながらも、一週間付きっきりで教え切ったのはいい思い出だ。


「留年回避どころか面白いくらい良い成績だったよ。」

「うーん…なんか知ってた。」


笑い合う。

あの1週間で竜司くんの地頭の良さは痛いほど感じたから。