「夏だ!休みだ!海原だ!!」


蓮が砂浜を走り下る。

ビーチサンダルをパラソルの下に置き、素足で跳ねるように波打ち際まで走る水色のビキニ姿の蓮。

しかし、突然砂に足を取られて顔面から倒れることは誰も予想していなかった。

ぼすっ、と鈍い音を立てて転ぶ蓮にギョッとして瑠衣が蓮を追いかけた。

手を取って瑠衣が彼女を助け起こすと、蓮がケラケラと笑っている。

恐ろしいほどハイテンションな蓮が、どこにそんな力があったのか、瑠衣を水中に投げ飛ばした。

憤慨する瑠衣と笑い転げる蓮の対比が面白くて自然と笑みが溢れてしまう。


「海……」


隣で慎吾がうめくように呟いた。


「民宿のプライベートビーチ!白い砂浜!ほぼ貸切状態!最ッ高じゃないですか……!」


泣き出さんばかりに唇を噛み締める慎吾。

あ…この人、本当にレジャーが好きなんだ…。

上下ハイビスカス模様のアロハスタイルの慎吾がアロハシャツを脱ぎ捨てる。

脱ぎ捨てたシャツが見事に風に舞ってしまい、慌ててゆっこがそれを追った。

ボーッとしてた私はゆっこを追おうかと思ったが、シャツはあまり飛ばなかったようで、ゆっこがすでに捕まえていた。

彼はおもむろにメガネを取り、これまたハイビスカス模様の浮き輪を右手に、スイカ模様のビーチボールを左手に掴む。


「ふ…ふふふふ……余った予算で浮き輪とビーチボール買ったんですよ……。ふふふふ。」


極度の興奮からか、ほぼ不審者状態の彼が、クセなのか早速つけていないメガネをクイっと上げた。

それを冷めた目で見つめる竜司くんがシュールだ。

そういえば、慎吾、メガネしていたらインテリって感じなのに、メガネ外すと少年のように輝く目をしている。


「竜司先輩ッ…!」


宝石のような目で竜司くんを見る慎吾。

ちなみに、今の言葉を翻訳すると、「こんなところにいてもしょうがないじゃないですか、早く一緒に海に行きましょう。」だと思う。……多分。


「あー俺子守苦手だからパス。柳田でも持っていけ。」


え?すっごい毒吐いたよね?今。

いつのまにか戻ってきたゆっこは涼しげな表情。

…大人だ…。