「明日、8月10日から1週間、双竜会は一時休会とする!!」


ざわざわとどよめきが空間を支配した。


「その期間は何をするも良し。会員はそれぞれ親交を深めろ。双竜会の雰囲気改善に尽力しろ!!」


息を呑む音がそこかしこから聞こえる。

みんな、少なからず感じていたのだ。

双竜会の雰囲気の悪さに。


「ただし、これだけは守れ。人様に絶対に迷惑をかけるな!一般人であろうと、俺たちと同じ立場であろうと。」


総長が一呼吸おいて再び声を出す。


「お前らがかけた迷惑は俺と幹部に行く。………俺を、仲間を、絶対に煩わせるな。」


ドスの効いた低い声を響かせ、会員たちを睨む。

総長の威厳に逆らえる者は無く、全員が直立不動の体制を維持していた。


「総長命令だ。そして、発案者は宮川凛。」


次が私の台詞だ。

一気に心拍数が上昇した。

さっきからずっと左腕のアームカバーを触っていた右手がぱったりと動かなくなってしまった。

呼吸が上がる。

ほら、やっぱりそうでしょ?

私がステージで話すなんて無理だ。

だんだん苦しくなってくる呼吸に焦る。

こめかみから汗が噴き出してくるのを感じた。

そんな自分が笑える。

臆病者。

私はいつもこうやって逃げるんだ。

ねえ、失望するでしょ?私の不甲斐なさに。

こんな自分も大嫌い。


「あっ………」


マイナス思考に陥っている私の背中を誰かがトンと軽く叩いた。

すっと呼吸ができるようになる。

総長だ。

いつも固い仏頂面の総長が若干微笑んでいた。