「まぁ、いいさ。隠すことでもないしな。俺が半年に一度御神楽会……父親のところに挨拶に行っていることは。」


静まる総長室。


「仮にも俺は組長の息子だ。言い方は悪いが、いつ死ぬか分からない社会だ。兄さんも姉さんもいるけど俺だって御神楽会を継ぐ可能性があるんだよ。」



嘲笑する竜司くん。

その冷たい笑みは誰に向けたものなのだろうか。

御神楽会か、父親か、兄弟か。

はたまた自分自身か。


「まぁ、俺は御神楽会を潰す気満々なんだけどな。」


彼は髪を掻き上げて不敵に微笑んだ。

背中がゾクゾクするような、あまりにも絵になる綺麗な姿だった。

壮助が咄嗟に頭を下げた。

竜司くんにはそれほどまでの威圧感があったのだ。

この人こそ総長に相応しい。

そう、誰もが思うような姿だった。



「で、言うのは簡単なんだけどさぁ。」



突然、ぐだーっと机に突っ伏す竜司くん。

さ、さっきまでのかっこよさが台無しだ…。



「双竜会の雰囲気が悪かったら元も子もねぇよな…。なんかポンっと妙案でも出てくれば良いんだけど。」



竜司くんでも困ることってあるんだ。

ちょっと可笑しくて笑ってしまう。



「それなら……」



気づいたら、私は手を挙げていた。

まるで自分が自分じゃないような浮遊感に襲われ、勝手に口が動いていた。


「へぇ。それこそ妙案じゃん。」


竜司くんが感心するように頷き、笑った。