私、髪の毛を思いっきり引っ張られたってこと?

首が折れる可能性もあったことに気づき、ゾッとする。

改めて、私を支えてくれた壮助に感謝だ。


「誰だって聞いているんだよ。女がここに来るんじゃねえ、雰囲気を乱しやがって。これだから女はよぉ。」


男は、私の髪から手を離したものの、私の胸ぐらを掴んで揺さぶってくる。


「どうせ『姫』狙いなんだろ?あぁ?媚売りに来てんじゃねぇよブス。」


そ、そんなつもりじゃないのに…。

視界の端で、蓮とゆっこが口を押さえている。

その場の全員が呆気に取られて動けない。

そんな最悪の空気の中、1番に動いたのが、壮助だった。


雅也(まさや)……凛さんに触るな。その手を離せ。」


驚くほど低い声だった。

本気で怒っているのか、雅也と呼ばれた男の腕を握る手に血管が浮き出ている。


「はぁ?なんだてめぇもよお!双竜会歴が長いからって先輩ヅラすんじゃねぇよ!俺の方が歳上なんだよガキ。」


威嚇する雅也を、壮助が思いきり睨みつける。

一触即発の事態だ。


「やめろ馬鹿野郎。雅也は新人のくせにイキリすぎ。壮助は熱くなりすぎ。二人ともツナちゃんから離れろチンパンジーども。」


さらに凄みのあるよく通る声で、瑠衣が二人を威嚇する。

さすが双竜会幹部、二人とも一瞬怯んで手から力が抜けた。

私はどすんと尻餅をつく。

締め上げられた胸元が解放されて、ゲホゲホと咳き込む。