前のように建物に入ると、心なしかぎすぎすとした空気が立ち込めているような感覚がした。

前のような朗らかさが薄く、少し嫌な空気だ。

それを感じ取ったのか、蓮はすでに逃げ腰だ。

長い薄暗い廊下を歩いていると、時々双竜会のメンバーと思われる男の人とすれ違ったりするが、全員見覚えのない人だった。


「壮助、なんか人増えた?」


そう尋ねると、壮助はためらわずに答えた。


「そうっすね、最近夏休みに入りましたし、新しいメンバーも増えているっすね。」

「じゃあ、空気が少しぴりついているのは新人さんが多いからなのかな。」

「よくわかったっすね。うまくやろうと努力はしているものの、やっぱり最初から団結、というわけにはいかないっす。」


髪を掻き上げ、前から歩いてきた人を睨む壮助。

睨まれた人は、新人だったのか、目を伏せてすれ違った。

軽く話をしながら廊下を抜けると、前と同じように大きな扉にたどり着いた。

あのホールに続く扉だ。

壮助が扉を開けると、眼前に例の光景が広がった。

たくさんの人たちがたむろし、談笑している。

彼らが一瞬話を止め、私たち、というか瑠衣と慎吾を見た。

しかし、前のように一斉に挨拶はしない。

主に瑠衣と慎吾に軽く頭を下げるだけだ。

まるで部活の先輩に挨拶するように。

やっぱり竜司くんは総長なんだな、そう実感した。