蓮がぐびっと麦茶を飲み込んだ。

冷静さを失っていた彼女も、麦茶の冷たさに少し頭が冷えたらしい。

そこを見計らい、私は話し始めた。


「私がパーソナリティ障害を持っていて、人と話すことや感情表現が苦手で、パニックを起こしやすいことは知っているよね?」


蓮が頷き、竜司くんも、真顔で聞いている。


「今の私の病気の症状はね、他にも不安になりやすい、感情を自覚できない、ストレスを感じやすい、情緒が不安定になりやすい、とか色々あるの。」


蓮がハッとしたような顔になる。


「私も、心の病気を持った障害者なんだよ。」


そう告げて、息を吸い込む。

声が震えないように細心の注意を払っている。

できるだけ、冷静に。


「竜司くんには前も言ったけど、私、中学生の頃いじめられていたの。蓮と同じだよ。私が児童養護施設にいるってことが悪い噂で広まってしまったの。」

「ひどいいじめを受けたよ。主犯は3人だったけど、クラス全員から無視された。放課後にトイレの水を飲まされたり、嫌な写真を撮られたり、散々悪口を言われたりね。」


手を握って震えを堪える。

蓮は、私の話に口を覆っていた。


「許せないよ。私をいじめた奴らなんか、許せるわけがないよ。」


そう言って微笑む私を、蓮が抱きしめた。


「話は終わっていないよ。」


そっと蓮を引き離し、私は口を開いた。


「本当に私が辛かったのはね、いじめじゃないの。」


蓮は驚いたような顔をしているが、竜司くんは案の定という顔をして頷いている。