「し…ってるよ…私が甘えているなんてこと…。そんなのとっくのとうに知っているよ。私がそういう卑怯な人間だってことくらい…。」


蓮の情緒がおかしくなる。

私も、今の蓮のような状態に何度も何度もなったことがあるから、彼女が頭の中でネガティブな思考を繰り広げていることが手に取るように感じられる。


「蓮は、卑怯じゃない。」


蓮を見つめて言い放った。

蓮の口角が変に上がった。


「ねぇ、凛、さっきからなんなの?私の言ったこと全部否定するじゃん……。」


苦笑する彼女は、肩から私の腕を下ろした。


「蓮、少し私の話をさせて。」


泣いて疲れたのか、蓮は自動的に頷いた。


「あと……ちょっと部屋の外で待たせちゃってかわいそうだから竜司くんも入れていいかな…?」


ドアの外で竜司があからさまに驚いたような気配がした。

気づいていないと思っていたのかな?だいぶ前からドアの前で気まずそうにしていることは知っていたんだけどな…。


「あ、私、竜司くんに気を遣わせちゃった…!?ご、ごめんなさいっ…」


一瞬いつもの蓮が戻ってきて、蓮のよく動く眉が跳ね上がった。

ガチャリ、とドアの音がして、竜司くんが入ってくる。


「あー…盗み聞きするつもりとかは全くなかったんだけどさ……二人が心配だったっていうか…」


私たちの視線から逃れるように顔を逸せてもごもごと言い訳する竜司くん。

蓮が小さく笑ったのが感じられた。

竜司くんが私たちの前に麦茶を置く。

カラン、と氷が心地いい音を立てた。