「あ、凛、おはよ〜。」


教室に入ると、ゆっこがすかさず声をかけてくれる。


「おはよ。」


私も笑い返して、自分の席に向かう。

教室の真ん中でアイドル的存在になっている瑠衣をチラリと見ると、彼は私に目配せしていた。

総長命令で私とあまり関われなくなってしまったから、挨拶代わりのつもりなのだろうか。

私も彼に笑顔を返した。

瑠衣の隣には相変わらず蓮がいる。

瑠衣もそれを大して煩わしく思っているようではなく、仲良さげに話している。

ケラケラと楽しそうに笑う彼女に、悪意は微塵も感じられない。

彼女のまっすぐな性格はすごく清らかで、美しい。

彼女は人を妬んだり、回りくどいことはしない。

その代わり正々堂々と正面から戦うタイプだ。

それ故に蓮の感情は驚くほどわかりやすい。

彼女のよく動く表情も、彼女の性格を見事に表している。


「蓮はすごいなぁ…。」


蓮のポニーテールをぼんやりと眺めながら、私はつぶやいた。

彼女のその綺麗な心が羨ましくないと言ったら嘘になる。

私の中には、あまりにも汚れた思わず目を背けてしまうようなどす黒い感情がある。

私が1番よく自覚している。

あの3人も、心の底から憎んでいる。

私を壊したあいつらのことは大嫌いだ。

そして、そんなことは考えないであろう蓮の心が正直羨ましい。