ぼんやりと竜司くんのことを考えながら登校していた。

昨日は竜司くんにつきっきりで数学を教えた。

竜司くんは想像以上に理解が早くて、なぜ私を頼るのか分からないくらいだった。

最後には私と同じレベルに速く正確に解いていて、内心こっちが焦ってしまった。

でも、いくつか問題がある。

意気込んで勉強を教えるって言ってしまったが、私がきちんと教えられるのはせいぜい理系分野だけだ。

星峰高校は文理分かれない高校だから、一般的な考査と同じようにいくつもの教科があり、もちろん文系理系どちらもある。

数学や科学は教えられるとしても、社会や英語は私では危ない、ましてや国語なんて教えられるわけがない。

その中でも特に現代文は壊滅的で、私が進んで反面教師になるべき存在だ。

私一人で教えるのはあまりにも心許ない。


「あれ、なんで私こんなに真剣に考えちゃっているんだろう。」


ふと我に返って苦笑する。

自分のことじゃないのにこんなに悩んでいる私が少し滑稽だった。

はぁ、とため息をつく。

どうしたもんかなぁ、と考えて虚しく通学路の上で交互に足を運ぶ。

最近、蓮とゆっこはいつも瑠衣のそばにいて、私が近づけない。

疎遠というほどではないが、またひとりでいることが多くなってしまった。

ゆっこはよく私を気にかけて一緒にいてくれるが、蓮が瑠衣に猛アタック中で、私なんて眼中になさそうだ。


「恋は人を盲目にする、ってこういうことか。」


私とゆっこはそう言い合って、蓮が目を覚ますのを気を長くして待つことにしている。