「楓!大樹!!」

何かの爆発によって倉庫の一部が吹き飛び、がれきの下敷きになった二人に瞬は急いで駆け寄る。

「大輔、何があった?今のは一体…」
「勇作!手を貸せ、早く!」
「あ、ああ」

追ってきた須賀にきつい口調で言い、瞬は必死にがれきをかき分ける。
大きな板を二人で持ち上げた時、ぐったりと目を閉じて横たわる沙奈の姿が見えた。

「楓!」

瞬は沙奈を胸にかき抱く。
すると沙奈にしっかりと抱かれていた健悟が、んん…とうめき声を上げた。

「大樹!大樹?分かるか?」
「…パパ?」
「ああ、そうだ。大樹、良かった…」

ぼんやりと目を開けた健悟の頭をなでると、込み上げる涙を堪えながら瞬は須賀に健悟を託す。

「早く病院へ!」
「分かった」

須賀が健悟を抱いてその場を離れると、瞬は沙奈を強く抱きしめる。

「楓、楓?頼む、目を開けてくれ!」

必死で呼びかけていると、沙奈のまぶたが少し動いた。

「楓!分かるか?俺だ」
「…あなた。大樹は?」
「無事だよ。楓が守ってくれたおかげだ」
「良かった…。あなた、助けに来てくれて、ありがとう…」

そう言って微笑むと、沙奈の身体からゆっくりと力が抜けていく。

「楓、楓?今すぐ病院に行こう。大樹も先に向かってる。君もすぐに治してもらおう。そして3人でうちに帰ろう。入園式の話、聞かせてくれるんだろう?写真も見せてくれるって、楓、そう言ってたよな?」

ぽたぽたと瞬の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

「楓、頼む。お願いだから目を開けてくれ。楓!!」

響き渡る瞬の悲痛な声。

カットがかかっても、誰も動けない。

スタッフの間からすすり泣く声だけが聞こえてきた。