撮影はいよいよ警察署のセットで本格化した。

捜査第一課と書かれた部屋に瞬が駆け込んでくる。

「戻りました!」
「風間、悪いな。大事な日に」
「いえ。それより詳細は?」
「殺人だ。今、鑑識と機動捜査隊が対応している。すぐに現場に行って引き継いでくれ」
「了解です。行くぞ、勇作」
「はいよ!」

同い年で同期という設定の勇作役の須藤と一緒に、瞬はまた部屋を飛び出して行った。

「カットー!」

「チェックOKです。次のシーンの準備お願いします」

ここからは時系列ではなく、同じ場所ごとにまとめて撮影していく。

ロケの日はまた別にして、スタジオ内でのシーンを細切れに撮る日が続いた。

衣装も常に同じで、瞬は入園式の日に着ていたスーツのネクタイを外した状態のままだった。

衣装選びの必要がなくなり、手が空いた陽子は一旦この現場を離れて、サザンクロスとコットンキャンディの仕事に戻ることになった。

「じゃあ明日香、あとはよろしくね。何かあったらいつでも連絡して」
「分かりました」

明日香は笑顔で陽子を見送り、ここからは一人で頑張らなければと気を引き締めた。