「ではでは、今日も一日お疲れ様でした。かんぱーい!」

バスローブ姿の4人は、明日香が買ってきた弱めのアルコールで乾杯する。

「はあ、美味しい!」
「ホント。お風呂上がりの一杯は最高だね」
「それにみんなと飲むから余計に美味しく感じる。一人で飲んでもつまらないもん」

そうだよねー!とご機嫌の3人に、明日香も嬉しくなる。

「でもみんな、お酒はこの一杯だけね。明日も朝からお仕事なんだから」
「ヤダ、明日香。優子さんみたい」

そう言ってあみが笑う。

「じゃあさ、ちゃんと明日香の言うこと聞くから、代わりに明日香に質問してもいい?」
「え?いいけど、なに?」
「うん。あのさ、明日香。今何か悩んでる?」

明日香はハッとして顔を上げる。
あみだけでなく、りなとふうかも真剣な表情で明日香を見ていた。

「え、ど、どうしたの?急に」

うろたえる明日香に、あみは続ける。

「明日香、私達一体何年のつき合いよ。明日香の様子がいつもと違うことに気づかないとでも思った?」

え…と明日香は言葉を失う。

「私、別に…。いつもと同じだよ?仕事でも、ミスしないようにちゃんと気をつけて…」
「そりゃ、明日香は仕事の時はしっかりしてる。でもさ、元気がないのは私達でも分かるよ」
「え、私、元気だけど…。風邪とか引いてないよ?」

ちがーう!と、りなが横から突っ込む。

「体調のこと言ってるんじゃないの。心のこと!何か悩んでるんでしょ?」
「悩み…。えっと」

悩んでいるように見えたのなら、それはやはり映画の仕事のことだろう。
自覚はなくても、頭の片隅では常に「どうする?」と自分に問いかけていたから。

「ね、明日香。私達では力になれない?話しても無駄だって思う?」
「まさか!そんなことない」

ふうかの言葉を即座に否定すると、3人は優しく笑った。

「それなら話して。ね?」
「明日香が一人で抱え込んでるなら、私達にも一緒に考えさせて」
「今さら内緒にするなんて、水くさいよー」

みんな…と、明日香は胸が一杯になる。

「分かった。今、どうしようか迷ってること、みんなに相談させて」
「うん!」
「もちろん!」
「何でもどんとこいよ」

明日香は笑顔で頷くと、映画の仕事を引き受けるかどうか迷っていると正直に話す。

「えー!そんなのやるに決まってるでしょ」
「そうよ。何を迷うことがあるの?」
「明日香なら絶対に成功する!私達が保証するから」

でも、そしたら…と明日香はうつむいて言葉を濁す。

「ん?もしや明日香。私達のこと気にしてる?」
「あ、なーるほど。こっちの仕事が疎かになっちゃう、とか?」
「みんなを見捨てるなんて、そんなの出来ない!とか思っちゃってる?」

あ、いや、その…とうろたえる明日香に、3人は、やっぱり!と声を揃える。

「もう明日香ったら。私達の為にその仕事断るなんて許さないからね!」
「ホントだよ。見くびってもらっちゃ困るわ。私達、明日香がいなくてもちゃんと一人で着替えられるんだからね!」
「あはは!あみ、幼稚園児じゃないんだから」

明るい3人に、明日香もホッとして笑顔になる。

「明日香、心置きなく頑張ってきて!」
「私達も明日香に負けないように頑張るから」
「私達の衣装のアイデア、たくさん吸収してきてね」

明日香は、決意に満ちた表情で頷く。

「分かった。頑張ってくるね。必ず成長してみせるから」

うん!と3人もとびきりの笑顔で頷いた。