「じゃがいものお味噌汁美味しい〜。」
麻里子がキラキラした目で莉子を見てくるから、少し大袈裟じゃないかしらと戸惑いながら、

「司様がじゃがいもを使った料理がお好きだって聞いたので…。」

俺の為だったのかと司は感動し、ひと口ひと口噛み締めるように食べる。

「美味いな…。」
司が思わず呟いた言葉は、隣にいる莉子にだけ届いて笑顔が溢れる。

みんなそれぞれ料理を楽しみ、なによりも母がほぼ完食してくれた事に、家族みんながホッとした。


「司に話しがある。後で莉子さんと2人で書斎に来て欲しい。」
父はそう一言残して席を立つ。

私も一緒に…?

莉子は少し不安になって司を見つめる。
司は大丈夫だと莉子を安心させる為、深く頷いた。

そして、司と連れ添って書斎に向かう。

少し前を歩く司に話しかけたいのに勇気が無くて、莉子はただ、ひたすらその大きな背中を見つめて付いて行く。

書斎までの廊下は長く、段々と不安を感じ少しだけ司に近付いてしまう。

「莉子は料理が上手いな、全て美味しかった。料理が得意なのか?」
司が唐突に足を止めて振り返る。

「得意…とまでは…でも料理は、好きです。」

「そうか…手が荒れてしまうと思って止めてしまったが、好きなら無理のない範囲でやったらいい。」

「本当ですか…ありがとうございます。」

私の手の為に、女中のような真似はするなと言っていたんだと分かると、司の優しさに触れた気がして莉子は嬉しくなった。