そこで、しばらく麻里子の学校話しを聞く。

しばらく話すと満足したようで、今度は莉子の1日を聞いてくる。そこで莉子はすかさず家事のお手伝いをしたい事を話す。

「まぁ。百合子さん、気遣いはご無用なのに…
怪我をさせたのは兄ですし、あなたは堂々とのんびり過ごしてくれて良いのよ?」
麻里子はそう言ってくれるが、

「それではとても心苦しいのです。
見ず知らずの私をこんなにも良くして頂いて、何かお返しをさせて頂かなければ気が済みません。」
莉子は布団の上に正座して頭を下げる。

麻里子と千代に目線を送り困った顔をしている。

「それに…ずっと寝ていたせいで身体が鈍ってしまいましたし、体力を回復させる為にも家事をしたいのです。
もし宜しかったら…麻里子様も一緒にいかがですか?良い運動になりますよ。」

何気なさを装って麻里子を誘ってみる。

「私も?」
麻里子は少し戸惑っている様子だ。

少し誘い方が強引過ぎたかもと、莉子は心配になってくる。

「あの…出過ぎた真似を申し訳ありません。
お怪我の方もありますし…無理して欲しくは無いのですが…。」

千代に頼まれた手前伝えてみたのだが、莉子は少し後悔し始める。

「そうね。そろそろ再開しようかしら…
ずっと逃げていたけれど、怪我をする前は花嫁修行として家事のお手伝いをしていたの。」

麻里子がニコッと笑いかけてくれたお陰で、莉子は少しホッとした。

「私も心強いです。どうぞよろしくお願いします。」

明日から少しずつ身体を動かす事になった。
夕方には顔に巻いていた包帯も取れ、おたふく風邪くらいの腫れをガーゼで隠す程度になった。

額の方はまだ紫色に傷が線のように浮かんでいるが、前髪で隠せる程度なので、ガーゼは取る事にした。