その後、莉子は3日ほど熱が上がったり下がったを繰り返した。その間、毎日1回以上司が部屋を訪れた。

その度にお饅頭やカステラ、大福、プリンなど色々な手土産を持って来てくれた。

どれも珍しく食べた事のない物ばかりで、初めは遠慮していた莉子だが、持ち前の好奇心が上回って一口だけでもと食べてしまうと、止まらなくなってちょっとずつ食べるようになっていった。

司の戦略にまんまと乗ってしまった気がするが、今では有り難く素直に頂いている。

そして、誰よりも莉子の側にいてくれたのは千代と麻里子だった。日がな一日寝ていた莉子は暇を持て余していたから、麻里子が来てくれる事でつかの間楽しい時間を過ごす事が出来た。

「千代さん。私も体調が良くなったので、明日から何か仕事をさせて頂きたいのです。沢山のご恩を少しでも返していけたらと思っています。」
と莉子は頭を下げる。

「ですが…百合子様はお客様として丁寧におもてなしするようにと、司様からも言われておりますし…。」

千代の一存では答える事が出来ない。

莉子は少し考えて、

「…家事を手伝わせて頂けませんか?…少しは何か恩返しさせて欲しいのです。」

千代としては莉子の気持ちもよく分かる。
だから無碍に止める事も出来ず、出来れば好きにさせてあげたいと思ってしまう。

「家事担当の者にもお話ししないといけませんし…少しお時間頂けますか?」
そう、千代は返事をしてその場を切り上げる。

「無理を言ってすいません…。他にこのご恩を返す方法が思いつかないのです。」

千代を困らせているのは、莉子だって重々承知している。