玄関には正装をした警備員が2人、目をギラつかせて周りを注意深く警戒している。

その後には執事のような初老の男と、女中達が待っていて、招待状のチェックや、荷物やコートを預かる場所が設けられていた。

「ようこそおいで下さいました、長谷川様。
主人が到着したら声をかけるようにとの事でしたので、貴賓室にどうぞ。」

他の招待客とは別の部屋に通されて、2人は顔を見合わせ、言われるままに執事に着いて行く。

通された部屋には所狭しと調度品が並べられ、それだけで莉子の緊張は跳ね上がり、思わず組んでいた司の腕をぎゅっと握ってしまう。

司は流石に慣れたもので、そんな莉子の手を優しくポンポンと撫ぜ、笑顔まで向けて励ましてくれた。

「こちらで少しお待ち下さいませ。手荷物、上着等お預かり致します。」

執事の男性がストールをと莉子に近付いて来るから、そこはすかさず司が手を貸して、ストールを脱がせて執事に渡す。

「さすがに…俺も目のやり場に困る…。」
胸元が露わになった莉子のドレスに、心臓を踊らせるのは司の番だった。

「は、流行りのデザインらしいんです…。もっと大胆なドレスの方も沢山いたので、大丈夫だと思ったのですが、そう言われると、私も物凄く恥ずかしいのです…。」

玄関からここまで、もっと際どいドレスの女性に何度もすれ違ったから、このぐらいは大した事無いと思っていた莉子だが、夫である司の反応を見てまた恥ずかしくなる。

「他の女性はどうでも良いが、俺は莉子だから駄目なんだ。」
司は目を泳がせながら、なんとか平常心に戻ろうと試みる。

「困ったな…他の男に見せたく無いくらい綺麗だ。」
ここに来て開けっ広げに心を露としてくる司に、莉子だって真っ赤になってしまう。