いつもは2人だけの無駄に広い食卓が、今日は所狭しと大皿が並ぶ。

「うわぁ。凄い、これ全部3人だけで作ったの?」
若旦那が品数の多さに分かりやすく驚いてくれる。

だから女子3人は嬉しくなって気持ちも上がる。

「焼き餃子はお店で買っできたものですけど、後は3人で作りました。このかぼちゃの煮物は麻里子さんが作ってくれたんですよ。」

「司お兄様、是非食べてみてください。私だってこのくらい作れる様になったんですから。」

麻里子は怪訝な顔の司にそう言って、必要以上に司の皿にかぼちゃの煮物を盛り付ける。

「そんなに入れたら他の物が食べられなくなるだろ。嫌がらせか?」
兄妹仲良く口喧嘩をしながら、司もどれも美味しいと言って食べてくれた。

「亜子も莉子から料理を学ぶ様になってから、家で料理するようになったんだ。いつの間にか俺より腕が上がってたよ。」
正利も妹の成長ぶりを喜んでいるようだ。

男性陣は酒を酌み交わし、それぞれが満喫した楽しい宴となった。

そして料理も全て平らげ夜も更けた頃、麻里子の立っての提案で、みんなでダンスを興じる事になる。

「飲んだ後に踊るなんて…。」
と、司は不平不満のようだ。

「では、僕が莉子嬢のお相手に立候補しましょうか。」
と、若旦那がからかい半分に莉子に問う。

びっくり顔の莉子は何と言って良いか分からず、途方に暮れる。

司にとって若旦那は仕事上大事な取引先だから、それまで失礼がないように上辺で取り繕っていたが、流石に不機嫌な顔になって、

「はいっ⁉︎ダメに決まってるじゃないですか。」
と、莉子の前に立ち塞がる。

「冗談ですよ。そんな事したら貴方に一生恨まれそうだ。」
若旦那はハハハッと笑い、両手の手のひらを降参という様に軽く上げる。

「冗談でもこれ以上莉子に近付かないで下さい。」
お酒の力も借りて、今日の司はいつにも増して莉子への独占欲を露わにする。