夕飯は司さんへと買ってきた焼き餃子をメインに、お味噌や副菜を作る事にする。亜子ちゃんも麻里子さんも手伝ってくれて、いつもより早く完成した。

「ねぇ。夕飯の後でダンスしましょうよ。練習の成果を見てみたいわ。」
麻里子さんが提案してくる。

「でも、相手役がいないと無理じゃないですか?」
亜子は乗る気が無いのかつれない返事をする。

「その、ダンスを教えてくださっている若旦那様を夕飯に招待してみたら?日頃のお礼も出来て一石二鳥じゃない?」

確かに、後2、3日したら東京に帰ると言っていた若旦那様には、何かお礼がしたいと思っていたけれど…急なお誘いはご迷惑にならないかしら?と心配になる。

「それは丁度良いかもしれませんね。お姉様、紀伊國屋の支店の方にお電話してみましょうか?」

亜子から迷う背中を押されて、若旦那様に電話をしてみる。すると、丁度帰るところだったところで、二つ返事で来てくれる事になった。

電話を切った後、司さんに先にお話しして了承を得るべきだったかもと心配になる。

壁の振り子時計を見上げるともう直ぐ5時半…

もしかしたら会社を出てしまったかもしれない…。電話してみようか…迷う。

「莉子ちゃん、お兄様には私が電話してみるわ。私のわがままだったら否応無く駄目とは言わない筈だから。」
そう言って麻里子さんが会社に電話をかけてくれた。

こちらは二つ返事とまではいかなかったみたいだけど、渋々了承は得られたようだ。

ホッとしたのも束の間、人数が増えるのだからおかずも後何品か作らなければと、慌てて台所に戻りバタバタと3人で料理を始める。