(莉子side)
そんな日々を過ごして、やっと週末を迎える。
晩餐会まで後1週間…。
ダンスに関しては、若旦那様からこれなら大丈夫だとお墨付きを頂きホッとしたところだ。
だけど…司さんとはあの日以来、まだ一度も一緒に練習をする機会を得られていないでいる。
約束したのに…。
少しだけ不貞腐れた気持ちになり、朝から憂鬱な気分で朝食の支度をする。
「今日は、この後麻里子を駅まで迎えに行ったら、俺は直ぐに商談に行かなければいけない。10時に車を頼んであるから、観光へ行くなら運転手に頼んでくれればいい。」
司が淡々と業務指示のように伝えてくる。
「はい、分かりました。お昼は麻里子さんと亜子と一緒に、中華街で食べ歩きをする予定です。」
私はあえて沈んだ心を見せる事無く、笑顔を作って返事をする。
「そうか、楽しそうだな。
…出かける時は…着物の方がいいかもしれない。」
「えっ⁉︎」
今まで外出着を指定された事など無かったから、驚いてつい司さんを見つめてしまう。
「いや…ダンスの練習で、足を酷使しているだろ…あまり窮屈な靴は、よくないんじゃないか…?」
司さんが珍しくしどろもどろになっているから、もしかして…洋服は私に似合って無いのかしらと心配になってくる。
このところの落ち込みで、思考さえも後ろ向き気味だ…。
「そうですね……着慣れたお着物にしたいと思います。」
「いや…莉子が平気なら、別に…何を着てくれても構わない…。」
歯切れの悪い司さんを見つめて、他に何言いたい事があるのでは?と、言葉の意図を探す。
「…すまない。ただ、心配になっただけだ。…好きにしてくれて構わない。
あと、これで好きな物でも何でも買ってくれ。きっと麻里子は容赦無いから、これで足りなかったら小切手を切ってくれていい。」
そう言って、司さんがお財布から幾らかお札を出して渡してくれる。
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます。」
と、丁寧に受け取る。
「いや、莉子は全く使っていない。たまには自分の為に贅沢に使ってくれたらいいんだ。服とかバックとかアクセサリーとか…欲しい物はないのか?」
司さんからそう聞かれると、返事に困ってしまう。
物欲がない訳では無いのだけれど、今までそんな贅沢をした事が無いから、自分の物を買うなんて考えられないのだ。
それに司さんが働いて稼いだ大切なお金を、一銭たりとも無駄遣いしたく無い。
「特にこれと言って欲しい物は…何か、探して来たいと思います。」
曖昧な返事をして話を終わらせた。
この後、いつものように司さんの支度を手伝い、玄関までお見送りをする。
去り際、久しぶりに司さんからサラッと頬を撫ぜられて、気持ちが上昇する。
それだけで鼻歌まで出てしまうなんて…自分で自分が可笑しくて、苦笑いしながら洗濯物を干す。
「お姉様、今日は良い事でもあったのですか?ここ数日落ち込んでるようだったので、心配していました。」
通いでお手伝いに来てくれた亜子にそう言われてはっとする。
「そんなに…顔に出てる?」
「お姉様って分かりやすいから。」
「そうなの?自分じゃ上手く隠してたつもりなのに…。」
ついため息をつく。
「そういうところ。まず心配事がある時は、ため息が増えてますし、ここ1週間は心ここに在らずな雰囲気だったから、若旦那様も心配してましたよ。」
亜子に指摘されて、急に心配になってくる。
「司さんも…何か気付いてしまったかしら…。」
「さぁ。でもお義兄様って、お姉様の事になると敏感だから、きっと何か感じてるかもしれませんね。」
手縫いを干しながら亜子が言う。
気を付けなくっちゃ…要らない心配をさせてしまう。
私は身が引き締まる思いがする。
なんだかんだと2人で家事をこなしていると、司さんが麻里子さんを連れて帰って来た。
そんな日々を過ごして、やっと週末を迎える。
晩餐会まで後1週間…。
ダンスに関しては、若旦那様からこれなら大丈夫だとお墨付きを頂きホッとしたところだ。
だけど…司さんとはあの日以来、まだ一度も一緒に練習をする機会を得られていないでいる。
約束したのに…。
少しだけ不貞腐れた気持ちになり、朝から憂鬱な気分で朝食の支度をする。
「今日は、この後麻里子を駅まで迎えに行ったら、俺は直ぐに商談に行かなければいけない。10時に車を頼んであるから、観光へ行くなら運転手に頼んでくれればいい。」
司が淡々と業務指示のように伝えてくる。
「はい、分かりました。お昼は麻里子さんと亜子と一緒に、中華街で食べ歩きをする予定です。」
私はあえて沈んだ心を見せる事無く、笑顔を作って返事をする。
「そうか、楽しそうだな。
…出かける時は…着物の方がいいかもしれない。」
「えっ⁉︎」
今まで外出着を指定された事など無かったから、驚いてつい司さんを見つめてしまう。
「いや…ダンスの練習で、足を酷使しているだろ…あまり窮屈な靴は、よくないんじゃないか…?」
司さんが珍しくしどろもどろになっているから、もしかして…洋服は私に似合って無いのかしらと心配になってくる。
このところの落ち込みで、思考さえも後ろ向き気味だ…。
「そうですね……着慣れたお着物にしたいと思います。」
「いや…莉子が平気なら、別に…何を着てくれても構わない…。」
歯切れの悪い司さんを見つめて、他に何言いたい事があるのでは?と、言葉の意図を探す。
「…すまない。ただ、心配になっただけだ。…好きにしてくれて構わない。
あと、これで好きな物でも何でも買ってくれ。きっと麻里子は容赦無いから、これで足りなかったら小切手を切ってくれていい。」
そう言って、司さんがお財布から幾らかお札を出して渡してくれる。
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます。」
と、丁寧に受け取る。
「いや、莉子は全く使っていない。たまには自分の為に贅沢に使ってくれたらいいんだ。服とかバックとかアクセサリーとか…欲しい物はないのか?」
司さんからそう聞かれると、返事に困ってしまう。
物欲がない訳では無いのだけれど、今までそんな贅沢をした事が無いから、自分の物を買うなんて考えられないのだ。
それに司さんが働いて稼いだ大切なお金を、一銭たりとも無駄遣いしたく無い。
「特にこれと言って欲しい物は…何か、探して来たいと思います。」
曖昧な返事をして話を終わらせた。
この後、いつものように司さんの支度を手伝い、玄関までお見送りをする。
去り際、久しぶりに司さんからサラッと頬を撫ぜられて、気持ちが上昇する。
それだけで鼻歌まで出てしまうなんて…自分で自分が可笑しくて、苦笑いしながら洗濯物を干す。
「お姉様、今日は良い事でもあったのですか?ここ数日落ち込んでるようだったので、心配していました。」
通いでお手伝いに来てくれた亜子にそう言われてはっとする。
「そんなに…顔に出てる?」
「お姉様って分かりやすいから。」
「そうなの?自分じゃ上手く隠してたつもりなのに…。」
ついため息をつく。
「そういうところ。まず心配事がある時は、ため息が増えてますし、ここ1週間は心ここに在らずな雰囲気だったから、若旦那様も心配してましたよ。」
亜子に指摘されて、急に心配になってくる。
「司さんも…何か気付いてしまったかしら…。」
「さぁ。でもお義兄様って、お姉様の事になると敏感だから、きっと何か感じてるかもしれませんね。」
手縫いを干しながら亜子が言う。
気を付けなくっちゃ…要らない心配をさせてしまう。
私は身が引き締まる思いがする。
なんだかんだと2人で家事をこなしていると、司さんが麻里子さんを連れて帰って来た。