「私は普段から冷酷で氷のようだと言われます。仕事の事になると容赦ないんで……太陽とは程遠い。」
俺はそう言って苦笑いする。

「上に立つ者として、時にそれは必要だよ。君は会社の後継者として随分向いてると思うよ。僕なんかは若旦那とは名ばかりの厄介者だからねー。」

「若旦那様も、本気になればきっと成し遂げられると思います。」
今しがた会ったばかりの俺が言うべき言葉では無いと思うが…

「嬉しいねー。司君に言われるとやれそうな気がして来たよ。」
そう若旦那は笑う。

「もし、本気で商売したいのであればいつでも長谷川商会に連絡して下さい。力になれると思います。」
すかさず会社を出してしまうが、

日本の絹織物は外国でも定評があり、高級品として重宝される。決して夢物語りでは無いのだ。

「心強いね。ありがとう。」
若旦那がそう言って、ピタリと足を止める。