「なあ、どっちが本当のあんたなんだ？」
それから、少しの間沈黙が流れた後に、ポツリと投げられた八神君の核心突く鋭い質問。
その言葉に、ぎくりと心臓が震える。
完全に見透かされてしまった自分の矛盾点。
ずっと見て見ぬふりをしていたのに、ここで曝け出されてしまい、動揺するあまり、つい視線を逸らしてしまう。
「別にどっちだろうと八神君には関係ないでしょ？」
ここはもう開き直って強制的に話を終了させるしかないと。
そう結論に至った私は、眉間に皺を寄せながら質問を質問で返した。
「まあ確かに」
すると、あっさり身を引いた八神君は、興味をなくしたように私から手を離す。
「別にどれが本当かなんて、どうでもいい。ただ、俺を楽しませてくれればそれでいい」
それから、あっけらかんとした表情で放った、究極な自己中発言に私は唖然としてしまった。
この人は、一体何様のつもりなんだろう。
人の生き様をまるでドラマかなんかのように傍観していることを公言する彼の神経が、全く理解出来ない。
他にも言いたいことは沢山ある。
けど、結局どれを言っても彼には無意味な気がして。
どの言葉も彼にとっては楽しませる材料でしかない気がして、これ以上反論することがバカらしくなってきた。
でも、これだけは絶対に言いたい。
「八神君って本当に狂ってるよね」
その一言に最大限の悪意を込めて、私は吐き捨てるように言い放つ。
「それはどうも」
それなのに。
そんな言葉さえも、八神君にとっては褒め言葉となってしまうのか。
これまでにない程の、爽やかで皮肉な笑顔を見せつけられ、私はまたもや彼を思いっきり睨み付けてしまった。
