「ちょっと八神君、何するの!?私のスマホ返して!」

相変わらず彼の行動には全くもって理解出来ないけど、とりあえずスマホだけは返してもらおうと激しく抗議する。

「文句があるならお前の彼氏に言え。なんでわざわざ、あんたらの仲を見せつけられなきゃいけないんだ?それに、あの白浜って女もわざと水差しに来たんだろ」

すると、そんな私を蔑むような目で見下ろし、吐き捨てるように言い放った彼の言葉によって、私の思考回路が停止した。

「……たく、どういうつもりか知らねーけど、俺に警告するならもっとマシなやり方でやれよ。マジでクソくだらねー」

それから、八神君は固まる私を他所に、私のスマホを人質ならぬ物質にして、さっさと歩き出していく。

「待って八神君。つまり、あなた達があの店に来たのは偶然ではないってこと?」

私は慌てて後を追いかけ、彼の言うことを確かめた途端、八神君は私を一瞥した後、深い溜息を吐いた。

「だから、そうだって言ってんだろ。もう、どうでもいいけど。とりあえず、俺の憂さ晴らしに付き合ってもらうから」


そして、怪しげにほくそ笑むと、再び私の腕を掴み、そのまま何処かへと連れられて行った。