障子で仕切られた六畳間の和室。

その部屋に並べられた四季折々のお花達。

皆それぞれに意味を持っていて、どれを選ぶかは自分次第。

漠然とではなく、自分が何を表現したいのか。
メッセージ性を大事にして生けろと先生から教わったので、私は今の心境を頭の中でイメージしながら白いコスモスを手に取る。




ざくっ。



「ああ、美月様っ!どうしたんですか!?そんな茎から真っ二つにお花を切るなんて!?」



…………あ。

しまった。

やってしまった。


一瞬の隙に邪念が入り込んだせいで手元が狂い、綺麗に咲き誇っていた白いコスモスの花は、無惨にも床に転がり落ちる。


「す、すみません先生。集中力が途切れてしまって」

せっかく、清らかな美しさを表現しようとしたのに、まさか出だしからこんな失態を犯すとは。

私は慌てて切り落としてしまった花を拾い、頭を深く下げる。


「美月様がそんなミスをするなんて珍しいですね。何か悩み事でもあるんですか?」


そして、ずばり今の心境を言い当てられ、私は言葉に詰まってしまった。


「……え、ええとそうですね。将来のこととか色々……」

とりあえず、どう切り抜けようか頭をフル回転させ、パッと思いついた単語をそのまま口にすると、先生は納得したように首を縦に振った。

「確かに。あの九条家に嫁ぐとなると、何かと不安はありますよね。でも大丈夫です。これからも地道に努力すれば、誰にも文句を言われないお嫁さんになれますよ」

そして、上手くこの場を誤魔化せたことに、ほっと胸を撫で下ろす。