「本当にお前は俺よりも貪欲だよな。青春でもしてろよクソガキ。そうすれば、少しはマシになるんじゃね?」
「あー……そっすねえ。確かに、最近気になる女出来ました」
「は?それマジで言ってんの?」
とりあえず、聞かれた事をそのまま答えてみたら、何故か物凄く驚かれた。
「とは言っても、ただの退屈凌ぎでしかないんで。なんか政略結婚しようとしている堅物女に手を出したら、どんな風になるかなーって思って」
「……ああ。一瞬でも期待した俺がバカだったわ」
だから、変に誤解されないように説明したら、今度は予想通りの返答が来た。
「最低ですかね、俺?」
「まーな。けど、本当に最低な奴は自分のこと最低とは言わねーよ」
確かに。
毎度店長の言うことには、やけに重みがあるから、この人の言葉ならすんなりと受け止められる。
「まあ、いいんじゃね?それが楽しいなら、好きにしろよ。せいぜい刺されるようなことはするなよ」
そして、犯罪行為でなければ、それが善か悪かなんてどうでもいいらしく。
今自分がしたいと思うのであれば、大体許容してくれる寛大さが、この人を好きでいる理由の一つであり、憧れでもある。
「肝に銘じておきます」
だから、俺は素直に首を縦に振り、それから暫くの間、店長とたわいもない話で盛り上がった。