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「あ、あの。八神君、ちょっといいかな?」


ようやく一日の授業が終わり、SHRが始まる前にさっさと教室から出た途端。
タイミング悪く担任と出会し、俺は気付かれないように軽く舌打ちをする。

「なんすか?バイトの時間迫ってるんで、短めにお願いします」  

とりあえず、無視するわけにもいかないので、軽く睨みをきかせて返答したら、あからさまにビビられ、危うく笑いそうになった。

「え、えと……。もうすぐ三者面談だから、こ、これをご両親に渡して下さい」

それから、まるで恐喝されているかの如く。
俺とは視線を合わせず、手と声を震わせながら、一枚のプリントを差し出してきた。


……いや。いくらなんでもビビりすぎだろ。


だかが十七のガキ相手に堂々と向き合えないとは、あまりの小心具合に見てて呆れる。


俺は頭のてっぺんが光っている担任の後頭部を凝視しながら、小さく溜息を吐くと、無言でプリントを受け取り、足早にこの場を去った。