__翌日。
「倉科副会長おはようございます。今日も相変わらずの清楚で可憐なお姿ですね!」
休み明けの月曜日。
登校して早々に生徒会室に赴くと、既に登校していた後輩である渚ちゃんが私を手厚く出迎えてくれた。
そして、毎度私に対するリスペクトが凄くて、とても有難いことではあるけど、若干引いてしまうのはここだけの話。
「実は、昨日から倉科副会長の艶やかな黒髪を目指して髪質改善始めたんです。それでも倉科副会長の絹のように細くて長く滑らかな天然の御髪には、到底足元にも及びませんけどね!」
それから、副会長の席に着いて今週のやるべき仕事を確認している間、渚ちゃんの止めどない熱いトークが続き、私は段々と恥ずかしくなってきて身を縮こませた。
名家の御子息•ご令嬢が集う都内屈指のエリート高である生徒会広報担当の神川渚ちゃん。
どうやら、生徒会選挙の立候補演説で私の話を聞いて以降いたく感銘を受けたらしく、そこから後を追うようになったと。
生徒会新任挨拶で堂々と公言されたのはつい最近のこと。
私は別に特別な志があるわけでもなく、当たり障りのないことを言っただけなのに、まさかそこまで渚ちゃんに影響を与えていたとは当時かなり驚いた。
そもそも、私が生徒会に入ろうとしたのは亜陽君が生徒会長に立候補すると言ったからで。
同じ生徒会役員になれば一緒にいる時間が増えるという、何とも邪な動機。
だから、毎度渚ちゃんに尊敬の眼差しを向けられる度に心が少しだけ痛む。
そんな私の気持ちなんて露知らず。
今日も渚ちゃんは肩まで伸びたふわふわな栗色の髪を揺らしながら、まるで女神様を見るような目を向けて朝から私を褒め倒してくる。