「八神君、もういい加減にしてっ!」


そして、目的地である屋上前まで辿り着くと、怒りが最骨頂に達した私は、怒鳴り声と共に扉を思いっきり開いた。



「……え?何?」


その直後、予想だにしない光景が目の前で広がり、そこで思考回路が停止する。


「来夏どういうこと?もしかして彼女?」

硬直する私を物凄い形相で睨み付けてくる女子生徒。

「あー·····。違う」

一方、壁によりかかりながら地面に座っている八神君は、女子生徒に跨がれ、首元に絡まれているにも関わらず。
平然とした様子で私を一瞥すると、気怠そうに返答した。

「じゃあ何?てか、このタイミングで邪魔されるのマジでうざいんだけど」

その一言で、女子生徒のボルテージは更に上昇していき、発する声に段々と怒気が込められていく。


いや。
私はただタバコを注意しに来ただけです。


……と、言いたいところだけど。


お互い下着が見える程はだけた制服。
スカートが太ももまでめくれ上がり、女子生徒の座り方が何ともいやらしいく。

いつぞやの、思い出したくもない光景が頭の中でフラッシュバックして、段々と血の気が引いてくる。

何故こんなにも、私は男女が絡む現場に居合わせてしまうのか。

というか、うちの風紀は一体どうなっているのか。

色々物申したいところは沢山あるけど、今まさに不純異性交遊が始まろうとするところを、みすみす見逃すわけにはいかず。

逃げたい気持ちを何とか堪えて、一歩前に踏み出した直後。

ふと視界の片隅で捉えた、コンクリートに転がっている肝心要な吸いかけのタバコ。