昨日の八神君とのキス。


忘れようにも、体の奥深くに刻み込まれてしまった彼の熱は、そう簡単に消え去ってはくれない。

彼にとっては遊びでしかないのに、いつまでも翻弄されている自分が情けなく、とても悔しくて。

いっそのこと誰かにサスペンス並みに鈍器で思いっきり頭を殴られ、そのまま記憶喪失にでもならないかな、とか。

もしくは、向かいから全力疾走してきた人とぶつかって、体と共に記憶も吹っ飛ばないかな、とか。

そんなバカげた考えが頭を過ぎり、私は何気なく窓の外に目を向けた時だった。



「…………あ」


ふと何気なく空を見上げた途端、視界の端で捉えた白い煙。


それは、ほんの微かなもので。
一瞬気のせいかと思ったけど、以前にも同じような光景を見たことがある私は、そうではないと確信する。

そして、浮かび上がってくる煙の発信源。


……まったく、あの人は本当に。


同時に、ふつふつと沸き起こる怒りの感情。


今回ばかりは見逃してしまおうかと思ったけど、無駄に強い正義感と、副会長というプライドが邪魔して、意思に反し体は逆方向へと向かっていく。