「それで、我が料理研究部はより高みを目指すために全国大会の出場を視野に入れています。なので、その費用として予算を20%程引き上げて欲しいのですが」

「そうですね……。ですが、料理研究部は設立されてからまだ日が浅いですし、部員数も少ないのと、目立った功績もないので、現時点での予算追加はなかなか厳しいかもしれません。とりあえず進言はしますが、あまり期待しないで下さい」

「そうですか……。わかりました。それでは失礼します」


生徒会長不在の下。
代理で行う、部活動の予算検討。
私は数ある仕事の中でも、これが一番嫌いだった。


我が校は上流階級の生徒が通うだけあり、スポンサーも手厚い。

だから、資金には全く困らないのだけど、それも全て実力があってこそ。

実績や、それなりの人数が揃っている部活であれば惜しみなく予算が充てられるけど、少人数で未発達の部には目もくれない。

なので、志があり、可能性を秘めた生徒達の意見を取り入れたくても、実績がないと要望を通すのは容易ではなく。
こうして、厳しい現実を突きつけなければいけないこともしばしばあった。




「……料理研究部かあ……」

がっくりと肩を落として生徒会室から出て行った生徒を見送ったと同時に、独り言がポロリと溢れる。


個人的にはとても応援したい部活であり、何よりも一番興味をそそられる部活。

実家が外食産業というだけあり、倉科家の中ではよく食に関する話が飛び交っていた。

だから、自ずと私も食について関心を示すようになり、生徒会の仕事がなければ、是非入部したいと思っていたけど·····。



__私は、亜陽君のお嫁さんになるから。


色々と好奇心は湧いてくるけど、結局は全てそこに行き着いてしまい。
私は余計な考えを払拭しようと、頭を小さく振る。

そして、ひとまず、今回のことを報告しようと。
私は提出された資料をまとめて生徒会室を後にし、職員室へと足を運んだ。



亜陽君は姉妹校の視察•会議に行っているので、暫くは私が彼の代理役。

だから、今日も色々と生徒会の仕事が詰まっていて。
これを毎日卒なくこなす亜陽君は、本当に優秀なんだと改めて思う。

けど、この忙しさは今の私にとって、とても好都合だった。

ちょっとでも余裕が出来ると、また思い出してしまうから……。