これまでの行為を全て見られていたという事実に、私は血の気が引いて思わず彼から視線を逸らす。

「あ、あの……。そうとは知らず大変失礼しました。以後気をつけますので……」

何はともあれ、ここは一応謝っておこうと。
私は胸元を手で隠しながら、震える声で謝罪の言葉を口にした次の瞬間だ。


「きゃっ」

不意に八神君は私の両手首を掴み、その勢いで長椅子の上に押し倒された私は、咄嗟の出来事に思考が付いて行かず、目が点になる。

「うわあー。めっちゃ跡付けられてんな。しかも、すげえいやらしい場所に」

石像のように固まる私を八神君は面白可笑しそうに上から眺めていると、ある部分に視線が留まり、そこでようやく我に返った。

「いや、見ないで!八神君、離して!」

亜陽君以外の男性に自分の胸元を見られてしまい、羞恥心と嫌悪感が交差する中、必死になって抵抗してみせる。

「まったく。人に散々注意しておいて、あんたもそれなりの事してんじゃねーかよ」

けど、八神君には全然効かないどころか、物凄く痛い所を突いてきて、ぐうの音も出ない状況に、私は言葉を詰まらせた。

「それにしても驚いたな。初めに襲った時は色気も何もなかったくせに、随分と“女”に仕上がってたじゃん」

その上、何も言わない私をいいことに、八神君は更に挑発的なことを言ってのけ、釣り上がったアーモンド型の目が鋭く光った瞬間、多大な危機感が押し寄せてきた。

「や、やだ。お願い、止めて……」

その表情から彼の考えが手に取るように伝わってきて、段々と体の震えが増していく中、私は涙目になりながら制止を求めた直後。

その願いをあっさりと払い除けた八神君は非情にも私に覆いかぶさり、露になった胸元に舌を這わせてきた。