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「……ん、亜陽君」

「美月もっと舌絡ませて。……そう、上手だよ」


もうすぐお昼休みが終わる頃。

私と亜陽君は誰も居ない資料室で、いけないことをしている。

それは、レッスンという名目で、亜陽君のキス攻めに逢うこと。

しかもそのテクニックは想像を絶するもので、唇を軽く噛んできたり、歯茎を舌でなぞってきたり、口内をなぞったりと。

キスだけで全身が蕩けそうになり、彼によって初めて知った“快感”というものは、私を極上の世界へと誘い、思考を容赦なく奪っていく。

「はあ……亜陽君だめ。もう苦しい……」

けど、流石に長い間キスをしていると上手く呼吸が出来なくなるので、そろそろ限界を感じた私は、小さく抵抗してみせる。

「確かに、もうこんな時間か。それじゃあ今日はここまでにしよっか」

すると、亜陽君はとても名残惜しそうに指の平で唇をなぞると、掴んでいた私の顎から手を離し、そこでようやく息が吸えるようになった。

「美月」

そして、呼吸を整えていると、少し急かされるように強めの口調で名前を呼ばれ、私は肩が小さく震える。

それからは、何も言わずに熱い眼差しを送り続ける亜陽君。

それがどういう意味を示しているのか。
即座に理解出来た私は、急激に全身が熱くなり、徐に首を縦に振ると、ベストのボタンに手をかける。

続けて、ベストを脱いだ後にワイシャツのボタンを震える手で第三まで外すと、亜陽君は小さく口元を緩ませてから胸元に唇を当てた。