「美月ごめんね。急に手荒な真似をして」

そして、いつもの柔らかい表情へと戻り、私の髪にそっと触れてきた。

ようやく普段通りの彼に小さく胸を撫で下ろしたのも束の間。

今度は髪をいじっていた指がするすると下に滑り落ち、先程自分がキスした場所を指の平で愛おしそうになぞり始める。

そのくすぐったさに、思わずはしたない声が漏れ出てしまい、私は咄嗟に自分の口を片手で覆った。

「ああ、本当に可愛い。もう可愛い過ぎて気がおかしくなりそう……」

そんな私の頬にキスを落とすと、次第に亜陽君の唇は首筋の裏へと滑り込み、耳元で感じた彼の熱い吐息に背中がぞくりと震えた直後。

「だから、これからは毎日ここに付けるね」

これまでにないくらいの艶かしい声でそう囁かれてしまい、私は訳が分からず首を傾げると、亜陽君は小さく口元を緩ませてから、ゆっくりと立ち上がった。

「鏡で見れば分かるよ。それじゃあ、また後でね」

そして、答えを言わないまま満足気に微笑むと、亜陽君は床に落ちている日誌を拾い上げ、扉の鍵を開けて資料室から出て行ってしまった。