九条亜陽君。

私と同じ高校二年生で、彼は国内の外食産業を牛耳る九条グループの一人息子。

一方、私は九条グループには到底及ばないけど、和食屋のチェーン店を抱えている倉科グループの一人娘。


九条家と倉科家は昔から深い繋がりがあり、その親交は今でも健在で、持ちつ持たれつの関係を保ちながら外食産業を引っ張ってきている。

というか、力関係は圧倒的に九条グループの方が上なので、九条家に倉科家が付き従っていると言った方が正しいのだろうか。

そんな我が家の事情を、物心が着いた頃から両親によく聞かされていて、倉科家がこうして安定した経営を続けられるのは全て九条家のお陰なんだとか。


そして、どの家柄にも付いて回る後継問題。


九条家は昔から頭のキレる亜陽君がいるので心配は無いけど、私は経営には全く向かない性格なので、将来不安しかないと父親が頭を抱えていた。

そんな中で舞い込んできた政略結婚の話。

私が九条家に嫁げば身内関係が築かれ、我が家の安泰が確保されるらしい。

そして、九条家にとっても倉科家が保持する経営権を共有出来る利点が生まれるので、好都合とのこと。

なので、幼少時代から私はずっと九条家に相応しい嫁になる為教育されていた。



亜陽君に嫌われないように。

亜陽君の好みの女性となるように。

私の人生に置いて亜陽君は絶対的な存在であり、決して逆らってはいけない。


今の時代こんな概念が存在するのはおかしな話なのかもしれないけど、これまで私自信そんな生き方に不満を持った事は一度もなかった。

寧ろ、亜陽君と結婚出来る保証がされているなら、どんなに厳しい花嫁修業でも喜んで受け入れられる。


政略結婚と言えば聞こえはあまり良くないのだろうけど、相手が心から愛している人であれば、こんなに幸せなことはないから。