教室に戻るまでの道中、先程言われた亜陽君の言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。


“私は亜陽君から逃れられることは出来ない”


そもそも、逃れたいなんてこれっぽっちも思ったことはないし、浮気現場を目撃した今でも彼に対する愛情は変わらない。

というか、私は亜陽君にどうしようもなく依存している。

小さい頃から許婚として育てられたせいもあるけど、それ以前に私は亜陽君のことがずっと好きで、その気持ちは成長するにつれて更に深みにハマっていく。

だから、あの言葉が亜陽君の本心ならこんなに嬉しいことはないし、言い方に若干の疑問を抱くけど、彼が私を手放すつもりがないと確信出来れば、それだけで心の救いになる。

それなら、昨日のことはいっそのこと水に流してしまった方がいいのかもしれない……。

次第に譲歩し始めていく自分の心に戸惑いを感じながらも、一先ず頭を切り替える為に私は深呼吸を何度かした後、スマホの画面ロックを解除し、生徒会のグループトークに謝罪のメッセージを送る。

そして、色々悩んだ結果、亜陽君個人にも改めて謝罪しようと決めた私は、彼とのトーク画面を開き、当たり障りない内容でメッセージを送信したのだった。