「……という感じで、亜陽君とはこれからも良好な関係を築いていこうと思うんだ」

窓から晴天が覗く休日の昼下がり。

私は隣に座る八神君にこれまでの経緯を全て話し終えた後、満面の笑みで小さくガッツポーズをつくった。

「ふーん、それは良かったな」

しかし、言葉とは裏腹に。

まるで苦虫を噛み潰したような顰めっ面を向けられてしまい、予想外の反応に私は狼狽える。

「それで、あいつとキスしたんだろ。しかも超濃厚なやつ」

それから追い討ちの如く。

まだ詳しい話は何もしていないのに、まるでその場に居たような口振りで図星を突かれ、私は驚きのあまり目を大きく見開いた。

「ご、ごめんね。でも、それでもう私には手を出さないって約束してくれたから……」

「あんな腹黒男の話なんて信用出来るわけねーだろ」

とりあえず弁解しようと試みるも、途中でバッサリと断ち切られてしまい、そこから何も言えなくなってしまう。

やはり、けじめと言えども彼とキスをしてしまったのは間違いだったか。

今更ながらに猛省していると、突然吐息がかかるくらい八神君の顔が接近してきて、不意を突かれた私は咄嗟に彼の唇を指で押さえた。

「……や、八神君?これから何をしようと?」

聞かなくても、獲物を捉えるような鋭い光を放つ彼の瞳を見れば、考えていることは直ぐ分かる。

しかし、今ここで八神君の思惑通りにされると非常に不味いので、私は敢えてとぼけてみせた。

「その唇あいつとキスしたままなんだろ?だから、早く塗りつぶさないとな」

そう妖しく微笑むと、八神君は私の手を簡単に引き剥がし、有無を言わさず唇を舌でなぞり始める。

「……ダメ。もうすぐ先生が来ちゃ……んっ」

何とか抵抗をしようにも、相変わらずの強引さを跳ね除けることが出来ず。

八神君に頭をがっちり固定されてしまい、そこから息を吸う間もなく容赦なくキスが襲いかかってきた。

会って早々。まさか、こんな直ぐに彼の掌で転がされてしまうなんて。

ただ、そのきっかけを作ったのは紛れもなく自分なので、堪忍した私は余計な抵抗はやめて、されるがまま彼の熱を全身で受け止めたのだった。