それから、暫しの間沈黙が流れる。
その意味は肯定なのか、否定なのか。
どちらとも捉えられる状況に段々と鼓動が早くなっていく中、突如父親の深い溜息によって、この微妙な空気は破られた。
「彼に色々話を聞いたよ。……それで、気付かされたんだ」
そこまで話すと、何やら固い表情で再び口を閉ざしてしまった父親。
けど、私は焦らず黙って次の言葉を待っていると、不意に口元を緩ませ、今度は暖かい眼差しをこちらに向けてきた。
「美月の思うようにしなさい。もう多くを求めないから。私達はただお前が健やかに生きてくれればそれでいい。それがどんなに大切な事なのか、この事故で嫌って程思い知らされたんだ」
それは、これまでにない程の愛情が籠った言葉。
しがらみから解放された喜びは勿論だけど、それ以上に自分はしっかりと愛されていることが認識出来、無意識に一筋の涙が零れ落ちていた。
「美月、本当にごめんなさい。我が子が死にかけて、ようやくこんな当たり前のことに気付くなんて。つくづく親失格よね」
その隣では、私以上に大粒の涙を零す母親。
そこから私の涙腺は崩壊し出し、暫くの間私達は手を取りながら静かに泣き続けた。