「そういえば、お前が言う好きな人っていうのは赤髪の男なのか?確か、八神来夏って言ってたな」

しかし、安心したのも束の間。
不意に投げられた核心つく父親の質問に、心臓が大きく跳ね上がる。

「うん、そうだよ。というか、私の恋人で大切な人なの」

何故ここで八神君の名前が出てきたのか分からない。

けど、せっかくの良い機会なので、私は隠すことはせず正々堂々と打ち明けることにした。


「そうか……」

けど、予想に反して父親の反応は薄く、何か意味を含めたような返答に、益々訳が分からなくなる。

「美月がトラックに轢かれた時、真っ先に駆けつけてくれたんだ。うちにもすぐ連絡を入れてくれたりして、私達なんかよりずっと落ち着いて対処してて、高校生とは思えなかったな」


やっぱり、あの時の声は八神君だったんだ。


一体何故彼があの場にいたのかは不明だけど、相変わらず機転が利く彼の行動力は流石だなと。

まるで、自分のことを褒められたみたいに、私は鼻高々になりながら父親の話を黙って聞いていた。

「しかも、彼があの八神グループの御曹司だったとは。てっきり、そこら辺のチンピラなのかと思っていたけど、人は見かけで判断してはいけないのがよく分かったよ」


確かに。

それに関しては何も反論出来ない。

けど、こうして彼の本質をしっかり理解してくれていることが嬉しくて、気付けば頬が緩んでいた。

「八神君は人一倍自分をしっかり持っている人なの。だから、私もそんな人になりたい。八神君みたいに、自分の将来は自分で選びたいの」


そして、何よりも一番理解して欲しい私の本心。

あの時は簡単にあしらわれてしまったけど、今ならしっかりと伝えられる気がして、私は真剣な眼差しを両親に向けた。